# 学校の生産性について考える(①民間でいう生産性)

ツイッターで「生産性を高めるというのは、具体的にはどういったことですか? 」

って質問があったのですが,単純に

  • 「成果物量/業務時間」
  • 「成果物量に伴う(売上・利益)額/業務時間」

と答えるだけではあまりにも不親切かなと思い,民間でいうところの「生産性」と「学校教育現場での生産性」の違いなどを考えてみました。

個人生産性と組織生産性

私(ICT担当)が,初めて就職した会社は,所謂SIer(エスアイヤー)と言われるシステム開発会社でした。6か月の社会人研修,3か月の開発者研修を経てプログラマとして顧客の会社先に配属されました。

今のように,パソコンでという形ではなく,大型汎用機と言われる規模の大きめなコンピューターでの開発仕事で,一個人がソースを組んで完結するというものではありませんでした。

システムと一口で言っても,それが更にサブシステムに分割されて,サブシステムが更に細分化されてプログラムとして組み上げる。サブシステムを組み上げるチーム単位は小さくても,SE(システムエンジニア以下SE)が1~2人,PG(プログラマ以下PG)が3~10人位のプロジェクト単位での仕事でした。もちろん,プロジェクト規模は小さいとき大きいときで様々ですが…。

全体としては仕事の規模により数十人規模の場合もあれば,年間通じて延べ何百人,何千人という大規模な開発もありました。

PG個人に求められるもの,「個人の生産性」ですが,それはある単位時間あたりにどの位の生産量を上げられるかです。

もっと簡単にいうと,顧客との契約でプログラム1ステップ(1行)あたりの単価が決められていました。つまり1月にそのプログラマが何ステップ生産できるかで,そのプラグラマの売上利益が算出されるのです。プログラマは単純にコンピューターに向かってプログラミングをしておけばいいわけでもなく,顧客との打ち合わせに参加したり,SEとの仕様確認をしたり,テスト環境を用意して実施したりと色んな作業工程があります。それらの時間も含めて1月あたりにどのくらいプログラムステップを上げられたのかというのが個人の生産性になります。

営業の仕事をしている方もまた「売上/業務時間」ですから営業生産性は割と意識できます。

この開発会社の生産性概念はあまりにも分かりやすい例で,一般の会社ではもう少し様々な仕事の形態(売上に関与しない仕事)が加味されて個人の生産性を数値化するのが難しくはなります。大まかにいえば,「会社全体の売上利益/全社員の働いた時間/社員数」会社の個人生産性ということでしょうか…。

学校の生産性は,さらに4時までの子供優先時間(教育の生産性)と4時以降の校務をこなす時間(事務生産性)で概念が分かれますし,そもそも売上が存在しませんので,上記のように単純ではありません。これについては後述します。

では組織の生産性とは何でしょうか?

SEと言われる人たちは,顧客から問題をヒアリングして設計書に落とし込む(システム化)作業をします。そして設計書を更にプログラム仕様書に落とし込んでプログラマに開発指示を出します。実際の開発に入ってからは,プロジェクトのマネジメントを行います。プログラムの開発工程一つ一つが納期より進んでるのか遅れているのか,遅れているとしたらどんな手を打つのか。プログラマは機械ではありませんから,プロジェクトメンバーの体調など様々な(労務)状況を考慮しながら,他部署との配置換えを行ってみたり,作業工程を変更してみたり,応援を要請したり,あるいはチーム内でのコミュニケーション効率を考慮してみたりと様々な工夫を行って,プロジェクト全体の生産効率を上げる努力をするわけです。プロジェクトマネージャー次第で,1+1が2ではなく,3になったり4になったりすることもあって,つまり個人同様「プロジェクト全体の生産量」を「単位時間」でわれば組織の生産性という事になります。

これは,開発現場での最小単位である開発プロジェクトでのお話ですが,大きな開発案件になるとこういったプロジェクトが複数存在し,ある時期には同時並行で複数プロジェクトが発生したり,ある時期には前工程と後工程で関連するプロジェクトが協力し合ったりと単純ではありません。またサブシステムごとに請け負っている会社が違って,他社のチームと協力したりということも発生します。

学校も民間も同じだと思いますが,

  • 個人のパーソナルスキルだけでなく,
  • 個人対個人のインターパーソナルスキル,(対人能力の向上)
  • 最小組織単位であるプロジェクトのグループスキル,(プロジェクト内での生産性拡大)
  • グループ対グループでのインターグループスキル(他社チームとの連携,会社対会社の折衝)

を高めることによって,個人の生産性と組織の生産性を高める工夫をしています。

生産性を高める工夫というのは,以下のような事です。

  • 「コミュニケーション能力の向上(報連相・結論を先に・定量定性データ・プライオリティ)」
  • 「ドキュメンテーション能力の向上」「ドキュメント平準化・標準化」
  • 「業務フローの見直し」「共通化・マニュアル化」
  • 「納期遵守意識徹底と内部納期設定」
  • 「データ共有・データベースの導入」
  • 「チームワークを維持する(価値観の喧嘩で仕事の遂行の邪魔になる人間関係は排除など)」
    ※人間を排除ではありません。
  • 「様々な開発ツールの活用」
  • 「業務改善ツールの活用」
  • 「個人と組織全体のタイムマネジメント(把握と工程管理)」
  • 「適材適所の人材配置」
  • 「無駄・ムラ・無理をなくす」
  • 「見積能力を鍛える(正確に見積もってその通りに行かないときの原因を探る)」
  • 「ミスをなくす工夫とそのための意識付け」
  • 「顧客との交渉能力向上(後から仕様追加,仕様変更されると工程が狂う)」
  • 「労務管理能力発揮と事前に危険を察知すること」
  • 「会議の生産性を高める」

思いつくまま挙げてみました。他にもあると思います。

個人でも出来ること,組織で行うべき事が混在していることは気付いていただけると思います。これらは開発プロジェクトだけでなく少人数規模の中小企業でも当てはまることだと考えます。

上述したことは民間企業のお話であり,学校でそのまま適用できるお話ではもちろんありません。しかし学校は子供の事が優先になるあまり,教員同士,あるいは管理職とのコミュニケーションが「業務寄り(効率的)」になっていないように見受けられますし,個人も組織もそういったコミュニケーション能力を磨こうという意識はないように思えます。(4時以前,以降ときっちり頭を切り替えられるかと言われると私も自信はないので批判している訳ではありません。誰も無理かもしれません)

コミュニケーション能力に関わらずですが,本来学校管理職や教育委員会は,もう少し民間企業が行っているマネジメントを見分すべきではないかと感じています。

教職員個人が何らかの方法で自らの生産性を上げても,その分余分に仕事が降ってくるような組織では,何のために業務改善を行うのか意味が分かりません。個人の生産性と同時に組織の生産性を上げられるようにしない限り教職員の受難は続くのだと思います。

学校の生産性については,次回の機会に記事投稿します。